 このところの暖かさで雪はかなりの勢いで消えていった。 川の水も水量を増し、勢いよく流れている。３月３日、桃の節句。  ネコヤナギの花穂が膨らみ、純白の産毛が宙に舞う。 「厳寒を 乗り越えて咲く ネコヤナギ 春の光に 無数にはじける」  南割から見る中央アルプスの山並。 セピア色の残る景色に、たなびく煙がゆっくりと空に上がって行く。  すっかり雪が消えて、茶色の大地が春を待っている。 やがて、雨が降り、陽射しが濃くなり、南風が吹くと、芽吹きの春が来る。  田圃の高い土手を駆け上がろうとすれば、そこには白い山。 ふるさとの山は、いつの日も、いつまでも、思い出の中に生きている。  ねずみ川の上流に古城（ふるじょう）公園が在る。 「あかつきの塔」から眺める駒ヶ根の町並みと南アルプスの絶景。  林の中から見る南アルプスの白い山並。 日増しに濃くなっていく春の西日を受けて、赤石山脈の山々は雄々しく輝いている。  樹幹の彼方に望む、南アルプスの女王、塩見岳。標高3047m。 ピラミッド状に聳える、その秀麗な姿は、神秘的な美しさを漂わせている。  樹木の額縁の中に浮かび上がる仙丈岳3033m。 左右均等に、台形を成す、駒ヶ根からの仙丈岳の姿が、私は好きだ。  雪融けを待つようにして咲くスノードロップ。 純白の花弁を縁取る、柔かな緑色。その清楚な姿は、春の天使。 
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