中央アルプス・千畳敷の秋
中央アルプスに秋がきた。
7月上旬まで雪があった世界だ。
植物たちは雪の覆いの下で眠りからさめ、
雪どけと同時に春を迎え、待ちに待った夏を力の限り生き、そして束の間の秋。
一年の大半を厳寒の冬とともに生きる植物たちが、
芽生えたその場所を定めの地として、精一杯生きている。
標高2600m、この地に生きる彼らたちにも、秋は実りの季節である。
様々に紅葉して、この夏の生活に、終止符を打とうとしている。
大気は澄み渡り、雲はとうとうとして流れていた。
やがて冷たい雨が降リ、雨はいずれ雪に変わることだろう。
昭和42年に開通した駒ケ岳ロープウェイ。
かつて東洋一といわれた山岳ロープウェイである。
今でも、到着駅の標高、および標高差は日本一らしい。
ふもとの駒ヶ根高原から専用バスで約40分。
しらび平駅からゴンドラは8分弱で千畳敷駅に到着。
駒ヶ根インターチェンジから1時間足らずでここまで登ってきてしまう。
その自由さは、ここに住み着いた植物たちと、何という違いだろうか?
この季節に紅葉を見に来る観光客の多くは中高年の女性たちだ。
バスツアーで企画旅行に組み込まれているのだろうか。
ご夫婦での参加もちらほら見える。
大半の方は街着に冬着を覆っているだけである。
中には、本格的な登山姿で、駒ケ岳頂上を目指す熟年のアルピニストもいる。
木曽駒が岳は標高2956m。日本100名山の一つである。
千畳敷に祭られている駒ケ岳神社。
頂上を目指す人々の、安全への思いを集めている。
快晴の空の元では神々の宴を感じ、
曇天の空の元では神々への畏怖を感じる。
ナナカマド、この木は燃えにくく、
かまどで7回燃やしても、残っているという。
この岩だらけの高山で、生まれた場所から離れることなく、
厳しい風雪に耐え、今、真紅の実を無数につけて、
今季を閉じようとしている。
遥かに続く、幾重にも幾重にも重なった山並み。
南アルプスの塩見岳の彼方に、
日本の霊峰、富士山の姿。
下るロープウェイの中から垣間見た、
渓谷の滝と紅葉。
20002年10月2日、束の間の千畳敷でした。
普段は里から眺めるだけですが、
ここには澄み切った空気と、青い空と、白い雲、
吹く風にさらされて、
極限の地に生きる植物たちの見事な生き様がありました。
中央アルプスロープウェイ(公式版)
「駒ヶ根の青い空」に戻ります。
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