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長野県のほぼ中央に位置する諏訪湖。この湖に近い辰野町から、 中央アルプスと南アルプスの間を流れ下る天竜川に沿って遠州灘まで 「JR飯田線」が走っています。 飯田線は、その昔の時刻表にはローカル線の一番最初に掲載されていました。 |
風光明媚な伊那の谷を南北に駆け抜け、豪快な天竜峡を横目に見ながら、 そして奥三河の優しさを感じつつ、 四季の移ろいとともに歴史を刻んできた飯田線は、 1997年全線開通60周年を迎えました。
駒ヶ根市には北から「大田切駅」、「駒ヶ根駅」、「小町屋駅」、「伊那福岡駅」の 4つの駅が在ります。かつてはそれぞれの駅に駅員の方々がいたのですが、 モータリゼーションの発展に伴い、いつしか「駒ヶ根駅」以外は無人駅になってしまいました。
ご多分にもれず赤字ローカル線ですが、学校に通う高校生をはじめとして、 まだまだ無くてはならない鉄道です。
大田切駅 |
大田切駅は駒ヶ根市の北の入口に在ります。 宮田村との境を流れる太田切川。 そのすぐ横に位置する駅です。駅の北はすぐ鉄橋になります。 また駅の前を国道153号線が線路に平行して走っています。 その昔には大田切踏み切りで、国道と交差する駅でした。 駅の東には自動車学校が2つ在ります。 かつて電車に乗って通った人々は、今は電車に乗らず自動車に乗っています。 |
駒ヶ根駅 |
その昔には「赤穂(あかほ)駅」と呼ばれていました。 昭和29年7月、赤穂町、中沢村、東伊那村、宮田村(後に分市)が合併し、 駒ヶ根市が誕生しました。駅名が「駒ヶ根駅」に変わったのは昭和34年10月のことでした。 中央アルプスの表玄関駅として、かつては新宿から直通の急行が走っていました。 その名も「急行駒ヶ根号」。しかし、昭和51年に中央自動車道が名古屋より、 そして昭和60年に東京より開通するに及び、年々観光客の足は 高速バスに移り、急行は廃止されました。 しかし、今年は豊橋から日祭日などには、特急「伊那路」が走っています。 すぐ東に農協や製糸会社が在り、貨物の集荷駅としても活躍しました。 |
小町屋駅 |
小町屋駅は小さな駅です。現在は市役所に一番近い駅ですが、 かつては赤穂農商(現赤穂高校)や赤穂小学校、赤穂中学校の最寄り駅です。 学校の先生方は殆どの方が電車で通っておられました。 朝のラッシュの時間帯には先生方と赤穂高校の生徒たちが、 集団で降りられたものでした。 今では赤穂高校の生徒達が主なお客さんになっています。 |
伊那福岡駅 |
伊那福岡駅は、駒ヶ根市の南端に位置する駅です。 駅の西には馬見塚公園が在り、昭和39年に赤穂高校より分離した 駒ヶ根工業高校が在ります。更にその西は戦後に開拓された大徳原が 広がっています。この駅は、 貨物の集荷やセメントのサイロが在る工業の香のする駅でした。 現在、一番の利用者は、駒ヶ根工業高校の生徒達です。 |
駒ヶ根市における飯田線の歴史は、明治42年に溯ることができます。 この年の12月、伊那電気鉄道が辰野・松島間に開通しました。
その後、未曾有の資金難を乗り越えて大正3年10月31日、赤穂駅まで開通したのでした。 これを記念して赤穂村は3日間の大祝賀会を催したのでした。 赤穂駅の開通によって、幾つもの運送会社が駅前に移転し、道路ができ、 現在の町の原形が形作られていったのでした。
その後、伊那電気鉄道(通称伊那電)は、 赤字に苦しみながらも七久保駅を大正7年に、上片桐駅を大正9年に、そして 終点の飯田駅開通は大正12年8月3日のことでした。 着工以来15年。辰野・飯田間40.3マイル、乗客賃金1円67銭。 運転所要時間3時間43分であったといいます。 まもなく省線(中央線)との貨物連絡運輸が開始され、 その期待を大きく担うことになったのでした。
伊那電の歴史はまた、電車を動かすための動力源として大田切発電所を建設し、 さらにまた、この地域において電灯事業を営むことによっても、地域に大きく貢献したのでした。
伊那電鉄が飯田から更に南、天竜峡まで開通したのは昭和2年12月。 総延長79.9キロで着工以来20年の歳月を必要としたのでした。
これより先、豊橋・大海間(延長27.9キロ)の豊川鉄道は明治33年9月に、 大海・三河川井間(延長17.6キロ)の鳳来寺鉄道は大正12年2月にそれぞれ 全通していたのでした。
天竜峡と三河川井間は延長66.9キロ、トンネルと橋梁の多い難工事でしたが、 これを受けた三信鉄道は昭和11年11月、想像を超える困難を乗り越えて開通させ、 よく昭和12年8月20日、辰野・豊橋間は4つの鉄道会社によって正式に全通したのでした。
やがて、昭和18年8月、政府は太平洋戦争という背景の中で4私鉄を買収し、 ここに「国鉄飯田線」が発足したのでした。 そして、平成9年8月、飯田線は60周年を迎えたのでした。 (参考資料:駒ヶ根市誌)
地域の発展と躍進を促した飯田線ですが、最近では自動車にその役目を、 譲ったかの様に思われます。
しかし、事故も少なく、排気ガスを出さない自然に優しい乗り物として、 子供や高校生そしてお年寄りの足としては必要不可欠のものです。
また、伊那谷を訪れる観光客にも、自動車には無いゆったりとした旅を提供してくれます。
忙しいばかりの旅ではなくて、訪れた地での風を感じ、そこに住む人々の温もりと、 歴史に培われた文化に触れる旅。 そして、何よりも車窓からの眺めは、自ずと心の旅へと 導いてくれるのではないでしょうか。
飯田線を愛する人の多いことからも、それはうかがい知ることができるのです。
関連ページ等
●JR駒ヶ根駅:TEL 0265-82-3049
● Design and Implementation
●kragenさんのページ
●JR飯田線ファンクラブ
●魅力発見・飯田線
●信州鉄道写真の旅
●飯田線について 飯田線各駅巡り