◆松◆ ◆松◆ ◆松◆
◆ようこそ、PINE HILLへ◆
May/2003

May・5月

◆花桃と中央アルプス◆

5月1日、昨日までの雨が上がり、全国的に晴れ上がった。
アルプスの雪も所どころ融けだして、雪型が見えるようになってきた。


◆山桜◆

駒ヶ根高原は、駒が池のほとりに咲く「山桜」。桜はばら科に属する。
この桜はとても良い香りがして、心が洗われる。花が咲くと同時に葉も開き始める。


◆中央アルプスと水鏡の水田◆

ゴールデンウィークに田圃は水田になった。
喜寿を迎える父が老骨に鞭打ってトラクターを廻した。
田の代を作り、植え代を作る。中央アルプスには島田娘の雪型が見えている。


◆水鏡◆

この季節は、一年のうちで最もきれいな季節である。
田を植える前の水田は、時に一枝の影をも欺かない鏡となる。
新緑の草や木々の織り成す様々な緑のパッチワーク。
そして満を持して咲く花々。
そのすべてを、アルプスを、大空をも映し出す、大地の水鏡がある。


◆芽吹きと水鏡◆

5月7日、早朝の束の間の一情景。
私は、昨年暮れに拗らせた風邪が原因で、昔の古傷が再発した。
この日、諏訪赤十字病院に手術のため入院した。


◆大輪朱鷺草◆

父が毎年咲かせている鉢植えの花。
台湾原産のタイリントキソウ。温室育ちである。
お蔭様で、手術は成功し、全身麻酔からも目覚め、入院から1週間で退院ができた。


◆山の春◆

アルプスの雪がしだいに解けて、
うぐいすの声にも磨きがかかった頃、
山々は広葉樹の芽吹きの緑と山桜の桃色に彩られる。
大地から新生の大きな「気」が生まれ、生きとし生けるものに大きな力を育む。


◆えびね◆

我が家の庭にもえびねが咲いた。
かたくり、すずらん、そしてえびね。
地植えの花々は5月の風を感じて、忘れずにやってくる。


◆5月の庭◆

一位(いちい)や躑躅(つつじ)の木の柔らかい新芽。
その下に咲く、紫蘭(しらん)、ジャーマンアイリス、あやめ、みやこ忘れ、紫つゆ草。
庭から畑へと続く細道に様々な花が、順番を競うように咲いている。
花々は只ひたすらに自分が生きることのために美しく咲いている。


◆5月の花菜園◆

畑の横に庭がある。
畑には玉蜀黍(とうもろこし)や茄子(なす)の苗が植えられている。
庭には真紅の雛罌粟(ひなげし)や桃色の芍薬(しゃくやく)の花。
黄色いヘメロカリスの一日花。
健やかなる時も、病のときも、癒し慰めてくれる花がある。


◆シラー・カンパヌラタ◆

庭の一角に咲くシラーの花。
すっくと伸びた茎に咲く青紫色の釣鐘型の愛らしい花。
夢の記憶の奥ふかく、七人の小人の住む家の、庭先に咲いていた青紫色の花。


◆山が笑う季節◆

5月26日、大阪まで日帰りの出張をした。
駒ヶ根インターから名古屋駅まで、ほぼ全線を、高速道路を利用した。
名古屋から新幹線で新大阪まで1時間弱。便利な世の中になったものだ。

よく27日は、62歳で急死した会社役員の葬儀に参列した。
前日まで元気だったのに、翌日には帰らぬ人となっていた。
奥さんがいて、息子夫婦がいて、孫がいた。
突然死。
残されたご家族の胸の痛みは計り知れないものがある。
偶然にも、斎場で司会をされた方は知人であった。
つい数週間前に46歳のご主人を亡くされた方だ。病死だった。
厳粛さの中にいたわりの心が表された見事な司会だった。
人の生と死について考えさせられた。
式の後、しばしのあいだ会話をかわした。
「お坊様はこんなご時世だから早く逝って良かったかもしれない、なんて、
慰めなのか、何かわからないお話をしてくださったのだけれど、・・・、
今でもどこかすぐ近くにいてくれるような気がして、・・・・。」
「・・・、こんな話がありますよ。
夫婦や身近な人たちは、あの世に行って、生まれ変わったとき、
再び夫婦になったり、兄弟になったり、親子になったりするんですって・・・。」
伏目がちに話されていた彼女は、このとき、
目を潤ませながらもしっかりと、私を見つめて言った。
「わたし、その話、信じています。」

当日は長野の支店によって長野市のホテルに泊まった。
よく28日は福島県那須高原にて会議。
長野から上越、新潟、会津若松、郡山を経由して那須塩原へ。
海が見えた。
新緑が美しかった。
たくさんの、それはもうたくさんの緑色がパッチワークのようになっていて、
・・・・・山が笑っていた。
イタリア語で「ほうれん草」という名のホテルにお世話になった。
午後2時からの3時間を越える会議、午後6時半からの懇親会。
夜9時から始まったシャンペンサービスの時間には、
美しい歌姫の、すばらしいソプラノの歌声を堪能させていただいた。

よく29日は東京へ。
久しぶりに再会した元中国国家観光局職員の可さんと銀座で食事。
SARSによる観光業へのダメージと、西安(長安)の再開発の話などを語り合った。
千葉の支店によって、この日はお台場に宿泊した。

30日、朝早くに首都高速に乗った。
レインボーブリッジを渡り、都心を抜けて信州へ。
諏訪インターで下りて、杖突峠を通り、高遠町を経て会社に戻った。
5月、一年で一番みずみずしく、さわやかなとき。
人は生まれ、結婚し、やがてあの世へと旅立っていく。
人生の長さは人それぞれ。
短いから不幸せ、長いから幸せということは一般論にすぎない。
このさわやかな季節にも人は逝き、人は誕生する。
たいせつなことは、「こころ」。
お蔭様で、今も、生きて、います。






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